top of page

座りすぎ2

  • 執筆者の写真: 瑠璃鍼灸院
    瑠璃鍼灸院
  • 2022年4月15日
  • 読了時間: 7分

ree

座りすぎの続き…


前回は座りすぎは健康に悪いということでした。


今回は、ほぼ作成物からの引用になりますが、色々な大学や研究者が

座ることでかかる負担や座り続けることへの影響が報告されています。


1.姿勢の違いによる腰部の筋活動量と循環動態変化について

  組織硬度の過剰な上昇は血流不全由来の阻血性疼痛を引き起こし,筋・筋膜性腰痛は多裂筋のコンパートメント症候群による筋阻血が一因であるとの報告がある。

隈元らは腰部脊柱起立筋部(LES)と多裂筋部(MF)の筋活動量を表面筋電計,組織血流動態変化を近赤外線組織酸素モニタ装置で測定した。

筋活動量は体幹屈曲に伴う筋活動の増加と体幹最大屈曲位での減少,屈曲20度でのMFがLESよりも有意に高い筋活動量となった。組織血流動態変化は,立位も座位も体幹屈曲角度の増加に伴うMFでのOxyHb(オキシヘモグロビン:酸素と結合した形のヘモグロビンで,動脈血のヘモグロビンはこの形)の有意な低下を認めた。また,立位では体幹屈曲角度の増加に伴うLES,座位では両筋部でのdeOxyHb(デオキシヘモグロビン:酸素と結合していないヘモグロビン)の有意な増加を認めた。 体幹屈曲保持において,立位と比較して,座位では筋活動量の負担が少ないが,特に多裂筋部では阻血性の循環動態変化が生じた。

1では「座ることで腰背部の筋肉にかかる負担」を筋電計や酸素モニタなどで視覚化した研究です。

座り姿勢では腰背部の筋の血流が悪くなるということが分かりました。


2.端座位姿勢保持時の筋活動について表面筋電図を用いての解析

  村上らは表面筋電図を用いて両側の内腹斜筋、腰部脊柱起立筋、大腿二頭筋、大腿直筋の筋活動を記録した。最も活動量が高くなる筋は腰部脊柱起立筋(以下背筋群)と内腹斜筋(腹筋群)に分かれた。背筋群においては両側の腰部脊柱起立筋が高い活動を示し、内腹斜筋は低い活動を示した。腹筋群では、一側の内腹斜筋活動が高く両側の腰部脊柱起立筋にも活動が認められる傾向であった。腹筋群では両側の腰部脊柱起立筋にも活動を認めたことから、中間位座位姿勢保持において、内腹斜筋が腹腔内圧の上昇、腰部脊柱起立筋が生理的腰椎前弯保持に関与して姿勢保持を行っている。背筋群では腰部脊柱起立筋に依存して姿勢保持を行っていることが考えられる。腰痛を有する患者や背部の筋緊張が高い患者においては腹筋群の収縮を意識させた座位姿勢を指導する必要がある。

2では「座る姿勢を保持する場合、活動量の多くなる筋肉と背筋群と腹筋群のどちらが有意に働きどちらの方が腰痛の訴えが多いか」に関する研究です。

腹筋群を上手に使えていない人(背筋群に頼って座っている人)に腰痛の訴えが多いことが分かりました。


3.椅子座位における腰背部の筋活動および循環動態

生活指導の一つとして「椅子」に着目し腰痛を減らせるような方法をみると、クッションを用いない椅子座位と4種類(以下(a)から(d))のクッションを用いた椅子座位が腰背部の筋活動および循環動態においてどのような変化を示すか比較した

使用したクッションは

(a)体圧を分散させることを目的に臀部および腰部に低反発素材を用いたもの.

(b)底面が弯曲しており使用者自身が能動的に姿勢を変化させる事で腰部痛の軽減を図るもの.

(c)臀部・腰部に加え骨盤を左右からサポートすることで骨盤の左右への傾きを抑え腰椎の前弯をサポートするもの.

(d)Cの機能に加えバックレストが高く下部胸郭までサポートするもの.

クッションを使用しない条件と比較し、(a)はT11の筋活動が 9.5%。L1の筋活動9.2% それぞれ減弱し腰部の循環動態減少が緩やかであった。(b)はT7の筋活動が 43.5%。T9の筋活動が21.5% 増加し背部の循環動態が増加した。(c)はL5の筋活動が 27.0% 増加し腰部の循環量が増加した。(d)は L3 の筋活動が13.4%。L5の筋活動が23.0% 増加し腰部の循環動態が増加した。

痛みの点数(背部・腰部・臀部にどの程度の痛みを感じたかをクッションを使用しなかった場合を5 点とし0から10の11段階で回答)がもっとも低かったのは背部・腰部・臀部いずれも(a)であった。もっとも点数が高かったのは背部が (b),腰部が(c),臀部が(d)であった。

つまり(a)のクッションは座り心地は良いが筋活動の減少が目立ってしまう。(a)以外のクッションは座り心地は良くないものの筋活動をしっかりサポートし循環動態も増加している。

3では腰痛防止に使うクッションについて腰背部の筋活動と血流の状態を調べるために実験を行った研究です。

数値で見ると低反発クッションは座り心地はいいが筋肉の活動量が下がってしまい腰痛の原因となるが、逆に他のクッションは筋の活動量は保持できるものの座り心地が悪いということが分かった。循環不良が痛みの原因物質を滞らせるという点から考えるとどちらが正解というのは難しいということが考察できた。

4.座位作業における座面の傾動が腰背部に及ぼす影響

椎間板内圧の亢進は腰痛を引き起こす。腰痛あるいは脊柱の運動能力におこる異常は,脊柱の分節状の構造の中にみられる“Motor segment” (椎間関節・前縦靭帯・後縦靭帯・椎間板)と呼ばれる箇所の異常に起因することが多い。

重要な役割をするのは椎間板である。椎間板は頸椎から尾椎までの椎体間にあり,緩衝作用を持つ。荷重や運動による負荷は水分含有量の多い髄核部の圧力を上昇させるが,その周囲の線維輪が圧力をとじ込め,内圧として上下の軟骨板方向にも圧を伝達して脊柱を強化する。

椎間板内圧は姿勢により大きく変化する。脊柱には生理的な彎曲があり,姿勢がこの彎曲から逸脱すると外から加えられたストレスに対して抵抗力が弱くなる。それは“motor segment”に,とくにその主体となっている 椎間板にかかるストレスが不均一になるためである。

第5腰椎椎間板にかかるストレスは,持ちあげる重量のみならず上半身の前傾度や彎曲の形によって大きく変わる。前傾が強くなると腰椎椎間板の内圧は高くなる.立位姿勢のL3椎間板内圧を100%とした場合,仰臥位24%,直立座位140%,前屈座位190%と報告されている。バックレストなどの使用により適度な腰椎前彎を維持することによって腰部への負担を軽減することが可能。VDT(Visual Display Terminal)作業では,体幹が前傾する肢位をとることが多い。

椎間板の栄養状態を良好な状態に保つためには,頻繁な椎間板における圧の変化が必要となる.このためには,姿勢の変換が重要であり,固定姿勢が継続すると栄養不良となる.長時間の座位作業において意識的に体位変換をするように努めるか,あるいは他動的に姿勢変換を行う配慮が必要である。

4は「座り姿勢ではどこに負担がかかるのか」を椅子の座面を通して研究したものです。

前傾姿勢をとると腰椎の椎間板にかかる内圧が上昇する。その姿勢を長く続けることは内圧が上昇したままでいることとなるため腰痛になりやすい。

そのため前傾姿勢の長時間保持にならないように適度に椎間部が動くように休憩などをとることが必要であることが分かりました。


5.肩こり・腰痛に対する鍼治療

筋の過緊張や血行不良が誘発され肩こりや腰痛にいたる。

長期間伸展位を保持された筋肉では筋収縮に伴う微小循環の阻害によって筋肉内に疲労物質や発痛物質が沈着。伸張性収縮状態にある筋では筋繊維の微小断裂もおこる。

5では「筋の過緊張や血行不良は腰痛の原因となる」ことと鍼灸でそのリカバーができることの研究です。

座りすぎて痛めた腰痛にも鍼灸が効果的であることもわかりました。


文献を読み進めていくことで

腰痛に対しては鍼灸は効果的であることが分かりました。

ただ生活習慣なのでその部分は患者さんの理解と協力が必要不可欠なのであるということも痛感した報告書となりました。


長くなったので次回に続く…



参考文献

1)姿勢の違いによる腰部の筋活動量と循環動態変化について.隈元 庸夫,世古 俊明,高橋 由依,松田 涼,三浦 紗世,金子 諒介. 第51回日本理学療法学術大会 抄録集.2016

2)端座位姿勢保持時の筋活動について 表面筋電図を用いての解析.村上康朗 第43回日本理学療法学術大会 抄録集. 2008

3)腰部脊柱管狭窄症の間欠跛行に対する鍼灸の実際と効果機序.

4)肩こり・腰痛に対する鍼治療. 鍋田理恵,鍋田智之. 関西理学療法. 2002 2巻p87-91

5)プロフェッショナル腰痛診療.山下敏彦,西良浩,金岡恒治.中外医学社.2018

6)椅子座位における腰背部の筋活動および循環動態~4 種類のクッションを用いた比較~ 遠藤浩一,小俣純一,鶴見麻里子,遠藤達矢,岩渕真澄,白土修,伊藤俊一. 第50回日本理学療法学術大会 抄録集. 2015

7)座位作業における座面の傾動が腰背部に及ぼす影響‐可動座面椅子を用いた試み. 藤村昌彦, 河村光俊,奈良勲.広島大学保健学ジャーナル.2001 1巻1号p65-72

 
 
 

コメント


  • Facebookの社会的なアイコン
  • Twitterの社会のアイコン
  • Instagram

©2019 by 瑠璃鍼灸院. Proudly created with Wix.com

bottom of page